暁兜の各パーツの特徴や素材をご紹介
はじめに
こちらの記事では、令和7年度の新作である暁(あかつき)兜の各パーツについて、細かくご紹介していきます。
ご紹介する作品は、
・1/5スケール 暁 紺糸威(こんいとおどし)
・1/4スケール 暁 真朱糸威(しんしゅいとおどし)の2点です。
※令和6年度に発表した、1/4スケールの紺糸威と茜糸威は、素材や色が真朱糸威のものと異なります。こちらについては記事の最後にご紹介します
各部位のご紹介
兜鉢(かぶとばち)
兜鉢には合わせ鉢という技法を用いております。合わせ鉢は、正式名称を「剥(は)ぎ合わせ鉢」といい、複数の鉄板を剥ぎ(はぎ)と呼ばれるパーツに分けて作り、それらをつなぎ合わせることで一つの兜の形を作る技法のことです。
兜は、頭部を保護するために丈夫な構造が求められますが、一枚の鉄板を成形することは難しく、重くなりすぎるという問題があります。そこで、昔の職人たちは鉄板を複数の小さなパーツに分け、それを一つに組み合わせることで軽量かつ丈夫な兜を作り上げました。
暁兜では、鉄板に、アルミを加工した鋲(星といいます)を打つ古来の技法を再現しています。
素材 | 鉄、アルミ |
鍬形(くわがた)
鍬形(くわがた)とは、兜に付けられる装飾の一部のことです。
兜の前面に取り付けられる二本の角のような形状をした部分を指します。
兜全体のデザインの中でも非常に目立つ部分で、元は装飾としての意味合いが強かったのですが、徐々に武士の身分や個性を象徴する重要な飾りとなっていきます。
暁兜の鍬形は曲線を意識し、外側に丸く伸びやかに広がるオリジナルデザインの鍬形です。
素材 | 真鍮に24K鍍金 |
錣(しころ)
錣(しころ)とは、兜の後ろや側面に付いている部分で、首や肩を保護するための重要なパーツです。兜の頭部だけでなく、首元から肩のあたりまでをカバーすることで、敵の攻撃や矢から武将の体を守る役割を果たしていました。
穴の空いた金属の板に、糸を通す威という技法を使っており、糸の色や模様によって兜の印象が作られていきます。
暁兜の錣は、鎌倉時代後期や室町時代の兜に使用された「笠錣(かさじころ)」です。首を大きく動かしても錣が肩に当たりにくいよう工夫された、和傘のように平べったく外側に広がった錣の形です。
1/5暁兜ではアルミ小札、1/4暁兜は真鍮の小札で錣を形成し、美しいシルエットを再現しました。
素材 | アルミまたは真鍮、正絹糸 |
吹き返し(ふきかえし)
吹き返し(ふきかえし)は、兜の前部や側面に取り付けられた、外側に折り返したような形をした部分です。兜のデザインの中でも特に目立つ箇所で、装飾的な役割と防御的な役割の両方を持っています。
皮は鹿皮に、赤とグリーンの二色の漆を流して模様を立体的に浮き立たせた「本漆印伝(ほんうるしいんでん)」の皮を使用しております。
そして、ブロンズ色メッキの透かしの丸い錫金具と、真鍮の花金具を重ね、華やかさと重厚感を演出しました。
素材 | 鹿皮、錫、真鍮 |
忍緒(しのびのお)

素材 | 人絹 |
付属品について
作家札
(左)1/4暁 (右)1/5暁
鈴甲子雄山の作品である証となる作家札です。1/4暁の作札は茜糸威、紺糸威ともに共通です。
素材 | 天然木 |
袱紗(ふくさ)
布地を表裏二枚合わせ、または一枚物で、ふろしきより小さい方形に作ったものを袱紗(ふくさ)と言います。
進物に掛けたり、茶道で茶碗を受けたりするためにも使われており、礼儀を尽くす際に用いられています。
(左)1/5暁 紺 (右)1/4 暁 真朱
袱紗の色は二種類です。似た色合いですが、紺にはグレーに近い色、真朱にはベージュに近い色の袱紗が付属します。
素材 | 人絹 |
芯木(しんぎ)

(左)1/4 暁 真朱 (右)1/5暁
素材 | 天然木 |
お櫃(おひつ)
暁兜には、収納のためのお櫃が標準でついております。
お櫃は、兜やその他の飾り物を安全に収納するための箱です。使用しないときは、しっかりと収納することで、埃や汚れから守ることができます。これにより、飾り物の劣化を防ぎ、長持ちさせることができます。
また、防湿の観点からもお櫃は足で箱を持ち上げている構造のため、湿気を下に逃す構造になっています。金属や絹糸は多湿の環境における劣化が早いので、お櫃で収納することをおすすめしております。
(左)1/4暁 真朱 (右)1/5暁
櫃も新作で、タモ(アッシュ)色のお櫃が付属します。木目があり木の質感を感じられるため、フローリングのあるお部屋とも相性の良いお櫃です。
素材 | 天然木 |